ーーーーガチャ。



部屋のドアの開く音で目を開けた。
誠二くんもパッと離れる。



振り向くより先に聞こえてきたのは、思っても見なかった人の声だった。





「あら、お邪魔したかしら。」





この状況で余裕たっぷりな声で男の人ならドキッとしてしまうような笑みで早紀さんはそこに堂々と立っていた。




私は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ドアの前に腕を組み、私たちを見下ろす早紀さんを見つめたまま固まった。





な、何で、どうして早紀さんが…




「何で早紀がうちに?」




思っていた事を誠二くんが口にした。
誠二くんは私とは反対に落ち着いた表情で早紀さんを見ていた。




「誠二に渡したい書類があったから、家に寄ったのよ。車もあるし、いるかと思って。
一応、声かけて上がらせてもらったわよ。」




そこまで言うと早紀さんは、フフッと楽しそうに笑って…




「声かけても聞こえないわよね?
大事なところだったものねぇ。」




笑っている人を見て、こんなにも怖いと思ったのは初めてだった。



怖くて、目を逸らす。




「説明して。」



「分かってる、だから話…」




遮られた誠二くんの言葉。





「誠二に聞いてないわ、
その子に聞いてるの。」





私はスッと顔をあげた。



早紀さんの綺麗な顔が無表情のまま、私を見下ろしていた。



さっきまで誠二くん触れられて熱を帯びていたはずの首筋がどんどんと冷たくなっていくのが嫌でも感じた。




怖い。




でも、それでも
私は立ち向かわなきゃいけない。