「イケないことだって分かってる。
でも…ずっと夢だったの。本当に好きになった人にファーストキス…もらって欲しいって。」





そっと目を開ける。
少し俯いて何か考え込んでる誠二くん。


困った顔は…してない。良かった。





「それが、俺って事なんだよね?」





上目遣いに誠二くんに問いかけられて、
ドキッとしながら、頷く。





「こんなわがまま、最後だから…
そしたら、もうなかった事にしてくれていいから。」





ホントはずっと、覚えてて欲しい。
それが本音。


シーンとしばらく静かな時間が流れる。
クーラーの音がやけに大きく耳に響く気がする。




やっぱり…ダメかなぁ。


都合良すぎるよね、こんなのね。
うん。





「鈴ちゃん。」




俯いていた目線を上げると、真面目な表情でストレートに…




「本当に俺でいいの…?」




えっ。

ビックリした。でも、




「誠二くんにもらって欲しい。」




恥ずかしいけど、素直に答えた。
今度はちゃんと目を見て。




すると、誠二くんはフッと優しく笑って、
いつものように柔らかい仕草で私の頭を撫でた。



思わず照れてまた俯くと、撫でていた手がそっと首筋へと下りて…



初めてのその色っぽい仕草に心臓が一気に暴れだす。



そのまま優しく引き寄せられる。



うぅ…心臓のドキドキ、バレちゃいそうっ。




少し首を傾げた誠二くんの整った顔がゆっくりと近くなってきて…その距離、3センチ…




ドキドキの限界で目を閉じた。




ありがと、誠二くん。
私のこんなわがまま、聞いてくれて。



でも、これで私の恋も後悔しないで終わらせられるよ。



いつになるか分かんないけど、諦められる。




心の中で呟く…




と、その時。