高校二年の春、クラス替えで仲の良かった子たちと別れてしまった優愛は自分のクラスに馴染めないでいた。
真面目で大人しく人見知りな優愛は、クラスの中心で騒いでいる諒哉を少し煩く思っていた。
でも一人でお昼を食べることが多くなっていった優愛を仲間に誘い入れたのは諒哉だった。
最初はお節介な人だな、としか思っていなかった。一緒に過ごす時間が長くなると、印象は少しずつ変わっていった。

クラス替えから二ヶ月も経つと、孤立していた人はいなくなった。孤立している人に仕事を押し付け自分は楽をしているようなふりをして、その人をクラスの輪の中に巻き込んでいった。向き不向きを分かった上でのことだから、押し付けられた方も苦痛を感じている人はいなかったようだ。

人を見る目と気遣いに感心させられた。

たまたま二人きりになったときに指摘してみた。

「中原君て、実は人にすごい気を使っているよね。」
諒哉は一瞬目を見開いたが、直ぐにいつものようなふざけた笑顔になる。

「何言っちゃってんの?そんなこと言うともっと俺、色々高橋に押し付けちゃうよ?」
「いいよ。私の苦手なことは押し付けないでしょ?」
直ぐにそう言うと今度こそ本気で動揺した。
「耳、真っ赤だよ。」
ちょっとイジワルかなと思われる事を付け加えた。

諒哉は顔を伏せるとそのまま手を伸ばし、優愛の頭をガシガシと撫でた。