シンプルな形に小さな紫色の石がついたその指輪は、薬指にピッタリだった。
「いつか、といっても近い将来にもっとちゃんとしたのをこっちの指に贈るから。」
今度は左手を取り、薬指をそっとなでた。
「これで充分だよ。」
まだ瞳を潤ませて指輪を眺める優愛に、
「いや!もう大まかなデザインも考えてあるんだ!」
と、メモのようなものを何枚か持ってくる。
一枚目は円が二つ重なっている絵。重なった所にはぐりぐりっと小さな丸が幾つか描かれている。
二枚目は明らかに諒哉が描いたのとは画力が違う、しっかりと指輪とわかるデザイン画だった。
二つの指輪が交差するように見えるデザインで、実は一つの大きなリングをぐるっとひねって二重にしたような形だった。
「今のバイト先でジュエリーデザイナーの人と知り合ったんだ。優愛の話をして、この指輪のデザインのことを相談したらすごいのってくれてさ。」
「そうなんだぁ。素敵だね、この指輪。二つのリングに見えて実は繋がっているところが、二人だけど道は一つって感じで…。」
「えぇっ!」
気分が高揚しすぎていて、ちょっとクサイことを言ってしまったことに気づかなかった。
「!い、今のなし!」
慌てて言い、諒哉を見ると優愛以上に真っ赤になっていた。
「実はそのデザイン、同じ事考えて描いたんだ。」
あ″ーっ!と声をあげながら、優愛の首もとに顔を埋める。
「同じように思ってくれたのはすごい嬉しいけど、改めて聞くと超恥ずかしい………。」
「確かに恥ずかしかったけど、諒哉も同じ気持ちなのが分かって私は嬉しかったよ。」
素直にそう言い、諒哉の背中に手をまわした。