つぼみ、ほころぶ

「っ!? チイッ!!」


期待、してもいない。


想像してもいない。


なのに、ユウちゃんは今まで見たことがないくらいの動揺で、あたしの言葉に反応した。


支えだった肘のバランスを失ったユウちゃんは左耳を畳に打ちつけた。


「ユウちゃん大丈夫っ!?」


「っ、ああ平気だっ」


でも、その耳は真っ赤だった。


慌てたあたしはユウちゃんへ近づこうとしたけど、たちまち制される。起き上がりかけの中途半端な体勢は、ただ布団から起き上がろうとする時のそれなだけ。


「他に打ったとこはっ?」


俊敏な動作で立ち上がったユウちゃんは、あたしを扇いでくれてた団扇を持ったまま露天風呂へ行こうとした。


あたしに、振り返らないまま。