控えめな足音も離れから充分に遠ざかった頃。


「――チイ」


妙に色気のある声色で、ユウちゃんがあたしを呼んだ。


「っ、な……何?」


「緊張、してんの?」


「何が?」


そりゃあ緊張するでしょ!!


こんな高級旅館。あれよあれよと連れてこられたこの離れ。ユウちゃんの後ろにある窓の向こうには、もうもうと湯気の立つ露天風呂が見える。広い縁側に囲ってあるそのお風呂は、どうやったってあたしたちだけのものだ。


大人合宿って言われてたし、いくら相手がユウちゃんでも、こんなとこ放り込まれたら変なことを想像しないでもない。


「――チイ」