美容師さんは魔法使いで、その魔法使いが使うハサミは魔法の道具に映る。


軽やかな音を立てて、少し邪魔だと感じてた箇所の髪がもれなく切られていく様子は、もう視線を逸らせないくらいに爽快だった。


「魔法だけ? 僕の技術はあると思ってくれないんだね……」


「っ、それは大前提だからっ!!」


「うん。ありがとう」


ボリューム調整だけのカットはわりと早く終わって、そこからはアレンジをしてもらえた。


「ちょっとだけ、大人だろう?」


「うんっ。結婚式にも行けそうだし、こういう髪型してみたかったーっ」


ハーフアップされた髪は、編みこまれながら緩くサイドで纏められていて、耳から下の残りの髪もふんわりと巻いてもらった。この絶妙な加減は自分じゃ出来ない。いつもは直線の前髪も、少し流してくれていて全体の雰囲気に合っている。