「……けど、べつにどうこうなる要素もなかったし、予感もない。そうしようと行動したこともない。――チイだってそうだろ?」


「――、うん」


「アニキには相当問い詰められたけどな。なかなか寝かしてくれなかったんだぞ」


「とんだとばっちりだったね。……ん? とばっちり?」


「ははっ。何でもいいよ。けど、オレにとっては、その話は引きずることがない、その場だけのもんだった」


――うん。それは、そうだと思う。


それは、単に話の種だというだけのこと。記憶の片隅に、忘れない程度に置いておけるようなものだった。


「……だった、はずなのにさ」


ユウちゃんが柔らかく笑った。


「さっき、チイがあんなこと言うから、思い出しちまった。――馬鹿だな、オレ。自分で言った時は確かにただの冗談だったのに」


何で? と訊くと、そればっかりだと窘められた。