ノッポの言う「捨てる」は、今まで歩み寄ろうとした想いを棄てるって事だと思えた。

 だから、自分の手でビーズを捨てに来た。

 俺と同じで―――――……。

 鼻をすすり上げなくノッポ。


 俺も泣いたら楽になれるのに……歯を食いしばって泣かないのは自尊心の表れか……。

「おい。泣くなよ。そんなクソババアにやる必要ないぞ。俺がそれ貰ってやる」

 そう言って左手を伸ばすと鼻をすすりながら俺を見るノッポ。

「せっかく綺麗なのに勿体無いだろ。……って別に俺はそういうのが趣味とかじゃないからな!」

 勘違いされたくなくて慌てて言うと、ノッポが涙を流しながら笑った。

「ありがとう……」

「おう……」

 ただ本当に綺麗なビーズだったから――。

 その時の俺はあまり深く考えてなかった様に思う。

 でも今思えば、もしかしたらノッポの気持ちを少しでも救ってやりたかったのかも知れない――。

 そして自分も救われたかったのかも知れない……。