シャッフル

「俺はーー!」

 俺は……後継者なんか……。

 言いかけた言葉を詰まらすと、手を握りしめグッと奥歯を噛み締める。

 今更、後継者なんか嫌だと簡単に言えるはずがない。今までの努力は?思いは?そんな簡単に投げ出せるものではない。そんな簡単な気持ちでやって来た訳じゃない。

 そんな事は誰よりも自分がわかってるーー。

 でも……、これほどまでにすべての事から逃げ出したいと思ったことはあっただろうか。これほどまでに心が乱れる事があっただろうか。

「ピアノが聴きたいならこっちでいいピアニストを探してやる。それで文句はないだろう?」

「は?」

 立ち上がり窓の景色を見ながら言う祖父の背中に眉をひそめる。
 
「ピアニストの女にはこちらから解雇を伝えておく」

 ーー?!