「僕は、今年から赴任してきた松永潮といいます。君のクラスの副担任をしています。」
今だ顔を表さない彼女に無意識に敬語で話しかけていた
「うし…お、どう書くの?」
「干潮の潮です。」
「………」
「………」
なぜ無言なのだろうという不安な思いに支配されていく
「私は柴田美雨…美しい雨で美雨」
何の前触れもなく物陰から出てきた彼女は例えるなら無垢で純白なうさぎのようで透明感のある肌に腰まで伸びた黒髪が映えている
「ねぇ、そこにあるパレット取って?」
「パ、パレット?これ?」
「うふふ…そう持ってきて?」
教室のには無数のキャンバスや木材があった
「はい」
「ありがとう、先生」
「柴田、ちょっと話し出来ないかな?」
「……もう30分位で一段落するかな、それからでいい?」
「じゃあ、それで」
「先生今暇?」
「暇…では、まぁ授業はないけど」
「じゃあ見てる?」
「柴田は何してるの?」
「絵描いてる」
「見て…いいの?邪魔になったりしないか?」
「全然、ほら」
といって手を差し出す彼女の行動は計算か自然かわからずすごく戸惑う
「ほら」
と急かすからついがっちりと手を握ってしまった
「せーの、よっ…と」
思ったより力強く引っ張ってくれて楽に大荷物を越えることが出来た
「ありがとう」
「先生意外と軽い…、こっち来て」
僕の半分くらいしかないだろう彼女に言われたのは意外と心に残った
案内されたドアを通ると壁一面の絵画が立て掛けてあった
「これを柴田が?一人で?」
「そう今はまだ半分くらいしかできてないけど、ここまで来るのに……3ヶ月かかってるの」
