さらさらと風は私の髪の毛を擽る。
漫画や小説でよくある屋上、うちの学校は生憎空いていない。
仕方が無いので近くにあった窓を開け、少し顔を出す。
「下の名前、なんていうんだろ……」
高橋、と呼ばれた時の彼の綺麗な目。
その目に、私は映っているのかな。
「おーいっ、加藤星奈ーっ!!」
声とほぼ同時にどんっ、と背中に軽い衝撃を受ける。
「……結城」
「いい加減フルネームで呼ぶのやめたら?」
「いーや、俺はこれを貫き通す」
「幼馴染みでフルネーム呼びって初めて聞いたわ」
「うん、俺もー」
いつもと殆ど変わらない会話を続けていると、授業を知らせるチャイムが鳴る。
「俺、先戻ってるよー……
って言っても、一緒か!!」
「煩い、早く行くよ」
ここから教室まで歩いてギリギリ間に合う距離、結城と一緒に走って戻っていった。
