いつものようにゆっくり落ちていく。宇宙の中を。
そうか。宇宙を繋げるって精神を繋げるって意味なのかな。
いろんなことが一気に崩れて、逆に落ち着いてきた。とにかくリノヴァの話を聞こう。
 でも、リノヴァはリノヴァなのかな。もしまた知らない何かがいたらどうしよう。
その可能性に気づき、不安が止まらなくなった。
お願い。不安を消して。あなたがいないなんて考えられない。
徐々に距離が縮まってゆく。姿が明確になり、黒い塊はリノヴァへと変わる。両手を広げているリノヴァに安堵が広がった。
変わらない姿を力いっぱい抱きしめる。

「リノヴァ! リノヴァ逢いたかった」

太陽の匂いに涙が出た。

「俺も逢いたかったよ。愛しい人」

体をそっと離し、顔を合わせる。自然に弧を描く眉、すっきりとした一重に黒い瞳。少し高めの鷲鼻。上唇がつんと出た、少し特徴のある口。優しい雰囲気まですべてそのままのリノヴァ。

「私もう分からなくて、不安で怖くて、とにかく助けて」

涙声でつっかえつっかえに訴える私を悲しげに見下ろしている。

「記憶が無いんだろう?」

あぁ。やはりすべて分かっているんだ。

「うん。自分の存在も分からないの」

「俺が君の記憶を封印したんだよ」

「リノヴァが……。どうして?」

「そうしなければ君を守れなかったんだ」

更に質問を重ねようとしたが、急に強く抱きしめられた。

「すべてを思い出したとき、何があっても俺と共にいてくれ」

悲しそうに、不安そうに揺れる瞳。いったい何があるのだろう。私には分からない。だけど、一つだけ確信している。

「大丈夫。どこにも行かないよ。あなたを愛してる、それもまた真実だから」

リノヴァは覚悟を決めたと言うように頷いた。