「ねぇ次はいつ逢えるの?」

私がそう問いかけると、彼はいつものように困った顔で答える。

「まだわからないが、すぐに逢いに来るよ」

思わずため息がこぼれた。
本当はわかってる。すぐに、なんて来れはしない。
ずっしりとした沈黙が降りる。
その沈黙に耐えかねたように彼は呟いた。

「もう寝なさい。いい子だから」

そうして私の髪を撫で、ベッドから降りる。

「そろそろ、お迎えが来るんじゃないのかな」

いたずらっ子のような笑顔からは、先ほどの暗い雰囲気は読み取れない。
彼の表情はくるくる変わる。そんな彼がとても愛おしい。だから私もにやっと笑う。彼に笑顔でいて欲しいから。

「もう来てる」

彼はただの空想だと思ってる。

「今日はどんな子かな?」

だけど私には本当に見えている。

「白い星みたいな鳥」

彼は私の世界観が好きなのだと言った。

「君の世界を見てみたいよ。どうしたら星と鳥が混ざるんだろうね」

そして私に紙と鉛筆を渡した。

「星を伸ばして羽を付ければいいんだよ」

それが私の生き甲斐に、仕事になった。

「難しいことを言うね」

私がくすくす笑うと星鳥も楽しそうに飛び回る。星鳥を目で追い始めると、彼はおやすみと告げて出て行った。
彼は知っているのだ。この生き物たちが私を夢へと連れ去っていくことを。
強烈な睡魔に襲われ、ぼやけていた視界が暗転する。


 黒い宇宙の中、差し込む光を目印にゆっくり落ちていく。どれほど落ちたのかはわからないけど、気づくと白い塔がぼんやりと見えてくる。
下を見れば、薄暗い森に囲まれた草原と白い塔。
そして、彼。
この世界で一番大切なもの。
彼は腕を広げて私を待っている。私も腕を伸ばして彼に微笑みかける。

「ただいま」

ふわりと抱き止められ、つま先が湿った草につく。

「おかえり」

力いっぱい抱きしめる。伝わる感触は冷たくて、少しゴツゴツしている。彼の体は鋭い羽のような黒いもので覆われている。青白い頬に手を添えると、綺麗な闇色の瞳が私を見つめる。

「いつ見てもあなたは綺麗」

うっとりと息をつくと、彼もわたしの頬を撫でる。尖った爪。かたい指。優しい動作。

「君が望む姿だからね」

そう。これは私の望む姿。今日見たあのいたずらっ子のような笑顔。

「あなたの方が好き。だってあなたは私だけを愛してくれるから」

「永遠に君だけを愛するよ」