僕は葉好木と一緒に散歩?していた。

野中葉好木(のなかはずき)

僕の数少ない女友達だ。

名前の通り、緑色のイメージで草花のようにおしとやか…

ではない。

野生の熊のようなやつである。

「ねえ、剣。あの続き貸してよ。」

僕は少女マンガが好きでこいつによく貸している。

男なのにとか思うかもしれないが、少女マンガは勉強になる。

どうやったら、女友達がたくさんできるのか。

まあ、実行してできた試しはないけどな。

「ああ、明日教室まで取り来い。」

「えー、めんどくさい。」

「じゃあ、貸さん。」

「葉好木の教室まで持ってきてよ。」

「なんで僕が…」

「じゃあ、教室の前にいるから持ってきてよ。」

「へいへい。」

なんてめんどくさいやつなんだ。

僕はこの女を女だと思わないことにした。

「なあ、葉好木。」

「ん~?」

「どうやったら、女友達できる?」

「一回死ねば?」

「うん、むり。」

「じゃあ、できないかなー。」

「僕は死ぬしかないんすか!?」

「いいじゃん、葉好木いるし」

「おまえ、女じゃない。」

「女ですけど!」

そう言って胸を寄せ始める葉好木。

……

なんもないやん。

断崖絶壁やん。

「わー、すごいー。」

「棒読み!?」

「だって、おまえぺったんこやん。」

「これから成長するの!」

「夢見るのはいいことだよ。」

「夢じゃないしっ!」

「そうかそうか」

そう言って葉好木の頭をなでる。

「う~…」

頭をなでると唸っておとなしくなる。

黙ってればこいつもかわいいんだろうけどな。



そうこうしてるうちにショッピングモールのカフェにたどり着いた。

別に来ようと思ってきたわけじゃない。

いつも、だいたい散歩してたどり着くのがここだった。

僕も葉好木も部活を辞めてしまったので、放課後は暇なのだ。

そのカフェで懐かしい顔を見た。

「あれ、剣じゃん。」

「久しぶりだな、月夜。」

「久しぶり~」

その周りにいる女子3人にもおじぎをしておく。

「なに~、その子、彼女??」

月夜は葉好木を見ながらニヤニヤして言う。

「違う、ペットだ。」

「え、そういう趣味??」

「違います!」

葉好木が全力で否定する。

「いや、違くないぞ。」

「違うでしょ!」

おふざけはこの辺にしとくか。

「こいつは葉好木。」

「こんにちは~」

「はいどもども~」

まったく女子はどうして語尾にいつも「~」が付くんだ。

「ところで剣。部活辞めたんだって?」

「ああ、そうだな。」

「月もやめたんだぁ~」

こいつは自分の事を月と呼ぶ。

「へー。」

「なに?その興味なさそうな返事。」

「いや、なさそうじゃなく興味ない。」

「ひどいなぁー、もー。」

僕と葉好木は同じ学校だけど、月夜は違う。

だけど、小学校のころからずっと一緒に剣道をしてきた仲だった。

高校に入って剣道部に入った僕らは、高校は違えどもお互いの活躍ぶりは知っていた。

女友達の一人だ。

「いいね~、剣は。

いちゃいちゃできる女の子がいて。」

「いや、こいつは女じゃない。」

「さっきから失礼ですね。」

葉好木さん、少しお怒りです。

「おまえだって彼氏いるだろう。

あの、剣道部の結構強い人。

なんだっけな、」

「渡辺でしょ。

別れたよ。」

そうだったのか。

「それはすまん。」

「いいのいいの!

もう忘れるの!」

無理に開き直ってるけど、結構悲しいんだろうな。

俺にもそういう経験…

ないな。

「そっか。

まあ、おまえ案外いい女だからすぐ新しい人見つかるさ。」

「案外とは失礼なっ!」

実際結構かわいいし。

すぐまた彼氏できるだろう。

「じゃ、またな、月夜。」

「じゃ~ね~。」

月夜と別れて他の席に座る。

「剣、女友達いるじゃん。」

「まあな。」

いるだけ。

多くない。

「そういえば、葉好木は彼氏とかいたことあるのか?」

「ないよー。」

「(よっしゃ!同類)」

「聞こえてるからね。」

「すいません。」

まあ、こんなやつにいるわけないよな。

「好きなやつとかは?」

「それは秘密。」

「そうかい。」

のちのち、この秘密が問題を呼ぶことになるのだが、それはまた別の話。

今一番重要なのは、



月夜の元彼氏のほうだ。