いろんなことがあったこの1ヶ月。

それまではなにもない日々が続いていたのに。

そして、これからはまた普通の日常が始まる。

退屈と言えば退屈だけどそれはそれでいいものだ。

今日は葉好木の住んでいるほうに遊びに行く。

どんなところなのか少し楽しみだ。

『どんなところなの?』

『なにもないから何ともいえない。』

と、葉好木は言っていた。

電車を何度か乗り継ぎ二時間ほどかけて目的の駅に着く。

その道中の景色はとてもきれいだった。

てか、あいつはいつもこんなに時間をかけて学校まできてるのか。

駅を出るとそこは山だった。

山…だった。

「剣、待ってたよ。」

「おまえ、ほんとに熊だったのか。」

「山しかないからってひどいよ!」

「でも、ここでなにして遊ぶんだよ。」

「おさんぽ。」

散歩かよ。

ここまできて。

でも、まあ、いつもと違う景色で葉好木とのんびりできるっていうのも悪くないな。

「じゃあ、まずどこを案内してくれるんだ?」

「山。」

「うん、全部山だもんな。」

「とりあえずあっちのほうに。」

そう言って山を指さす。

まあ、全部山だけども。

「じゃ、いこ。」

「おう。」

歩く、歩く、歩く

「そういえば葉好木。」

「んー?」

「この前言ってた

覚えてないのが当たり前

ってどういうことだ?」

「あー、忘れなよ。

忘れた方がいいよ。」

「なんだ、その気になる言い方。

教えろよ。」

「葉好木はちょっと言えないかな。」

「そうなのか。」

言えないってどういうことなんだろうか。

少し気になる。

その後もいろんな話をしながら山を歩く。

歩く、歩く、歩く

…歩く……歩く………

「歩きすぎだろ!」

「え?そう?

まだ10km超えたくらいだけど?」

「なに?今日の目的はウォーキングですか!?

一体どのくらい歩くつもりだったんだよ!」

「今日で42.195km。」

「はぁ!?」

「あと、10kmくらい歩いたら半分だから休憩しようね。」

「まだ半分なんだ…。」

まあ、たまにはいいか。

「あ、葉好木。」

「ん?」

「そういえば別れ…」

やべっ!

こいつ後釜狙ってるんだっけ!?

今言ったらすぐ告ってくるのだろうか。

いやしかし、そんな勇気は葉好木にはないはずだ。

「そういえば、なに?」

いや、まあ後釜狙ってるとか冗談かもしれないし、

「別れた。」

「え!」

なんか嬉しそうだぁ!

どうしよう!どうしよう!

「別れたの!?」

「あ、ああ。」

「ふへへ。」

ちょーーー、嬉しそうだぁ!

怖い!なんかよくわからんけど怖い!

「は、葉好木さん?」

「なあに♪」

♪ついとるー!

「あのですね…」

「ん?♥」

♥ついとるー!

「なんでそんなに機嫌よくなったんすかね?」

僕が別れたことによって葉好木が僕を狙いやすくなった。

だから機嫌がよくなったということを確かめたかった。

「ひ♥み♥つ♥」

♥増えとるーーー!

なにこいつ!

きもちわるっ!

誰!?こいつ誰!?

僕が知ってる葉好木じゃない!

不思議と葉好木が僕のことを好きだと想像しても全く鼓動は早くならなかった。

葉好木はなんかそういう感じではない。

「葉好木、今どのくらい歩いた?」

「もう少しで葉好木んちだよぉ~♪」

1日中このテンションなのかな?

それはそれでキツいぞ。

「ねえ、剣♪

今日の予定60kmに変更しよっか☆」

「やぁめてくだぁさい~!」

葉好木の家に着く。

これだけ仲良くしていておうちの人に会うのも、家に行くのも初めてだ。

「ただいま~♪」

家着いてもこのテンションなのかよ。

「お邪魔します。」

「いらっしゃーーーい!!」

猛スピードでなんかくる!

「この子が葉好木の彼氏ねっ!」

「ち、ちがいます!

葉好木、このお方は誰だ!?」

「真菜。」

「いや、誰だよ!」

「姉。」

「おお、お姉さんですか。」

「よろしくねぇ~♪」

葉好木と似てるし、なんか某有名人にそっくりだ。

吉高由○子似だ。

ハイテンション吉高由○子だ。

「あ、入って入って~。」

「お、お邪魔します。」

こんな山にある家だからもっと古ぼけているのを想像していたが、実際は普通にきれいで築7、8年といったところだった。

リビングに入ると妹もいた。

小さかった。

しかし、

「葉好木、妹さん何歳?」

「今、11だよ。」

え?

中学2、3年という背丈だ。

明らかに周りよりでかい。

ちなみにお姉さんは普通くらいだ。

「葉好木、おまえ…」

「言うな!気にしてるんだ!」

「妹より小さい?」

「うおぉおーー!

言うなって言ったのにぃー!」

「ちなみに胸も小さいよ☆」

お姉さん登場。

「なっ!」

「真菜ぁーー!」

「おまえ…

今までごめんな…小さい小さいってバカにして…。」

「うわぁああーーー!」

こんな風に葉好木家は賑やかだった。