僕の決めたこと2つの2つ目は1ヶ月後に月夜と別れることだった。

付き合ってそろそろ1ヶ月が経つ。

僕は月夜の家に行くということになったときその日に別れようと決めた。

なんで別れるのか、それはこれから分かるだろう。



「なんで…?」

「月夜、おまえはまだ渡辺が好きだよ。」

僕にはなぜだか分かった。

あの渡辺と対決した日。

月夜は渡辺が大好きだってことに。

僕は付き合っていた人と別れて、その後も付き合っていた人のことが忘れられないという気持ちがなぜか分かる。

付き合ったことなんてないのに。

付き合っていた人が新しい相手を見つけていたり、異性と仲良くしていたら、もう付き合ってなんかいないのになぜだか嫉妬してしまうことがないだろうか?

きっと渡辺も同じだったはず。

だから、月夜は渡辺がまだ好きだと思う。

『 渡辺が好きだった!

違う!好き! 』

こんなこと叫んだ月夜が渡辺のことをもう忘れたなんてあり得ないんだ。

しかも、噂のせいでもう高校じゃ彼氏できない。

そんなこと月夜だって分かっていたさ。

そして、ちょうどよく僕がいた。

「なんで!?

渡辺のことなんてもう忘れたよ!」

「忘れてなんかいない!

あんなに好きだった人のことを忘れるわけがない!」

「え…。」

「僕を好きだって言ってくれたことに偽りはないと思ってる。

でも、月夜、まだ、渡辺が好きだろ?」

「そんなことは…。」

「ないって言える?」

「言え……ない。」

そうだろうな。

きっと僕は過去に好きだった人間なんだから。

渡辺より古い好きなんだろう。

「わたしね、噂のせいで高校では彼氏とかできないと思ってた。

今でも思ってる。

わたしは渡辺が好きだって気づいてた。

まだ好きなんだなって。

でも、もう一度告白するのが怖かった。

また渡辺がそれをネタに変な噂を流すんじゃないかって。

もし付き合えたとしても、その後のことも怖かった。

だから逃げてたよ。

ううん。

逃げてるの。」

「月夜。

僕がいる。」

「え?」

「僕がいるから。

もし、またそんなことがあっても、僕がいるから。

また僕が助けてやるから!

だから安心しろ!

僕は女の子には優しいんだ。」

「なにが優しいよ。

全然優しくないよ?」

あっれー。

「付き合って1ヶ月で振ってくる男の子、優しくなんかないよ。」

「ですよねー。」

「でも、優しくなくてもかっこいい。」

かっこいいってよ。

めっちゃかっこ悪いじゃんか。

「月夜、もうおまえは強い。

僕と付き合ってなくても、僕が着いているし、いつでも助けてやる。

だから、鬼ごっこはもうおしまい。

僕が捕まえた。

だから、今度は月夜が鬼になって、渡辺を追いかけてやれ。」

「うぅ…。けん~。」

泣き出す月夜を僕は抱きしめた。

「けん~。けん~。

ありがとう…。ありがとう…。

もう、わたし頑張れそうだよ…。」

「ああ、頑張れ。」

「うぅ…。」

背中を押すのが僕の役目。

僕に彼女がいるなんて似合わない。

バスがくる。

薄暗い夕方。

バスのライトが眩しい。

「もう行かなきゃだ。

これでおしまい。」

「おしまいだね。」

「またな」

そう言って微笑む僕。

「待って!」

その声に振り向くと

頬に柔らかい口づけ。

「この1ヶ月のお礼ね。」

「あ、ああ。」

お礼にしては大きすぎるよ。

バスのドアが閉まる。

目が腫れ頬に涙の跡がある月夜。

その月夜はいつものようににっこり笑ってなにかを言った。

『がんばる』

強い目でそう言った気がした。

がんばれよ、月夜。

強くなった月夜と僕の首には



同じ月が昇っていた。





恋は嘘でした。