健太は、友子ちゃんに振り回されてるだけだが、花は俺に気を使ってくれたみたいだった。


俺「とりあえず、どうする?」


田中「んー、お腹空かない?」


俺「確かに空いたな、出店で何か食べようか?」


田中「うん」



俺と田中は、すぐに目に着いたお好み焼きとフランクフルトを買って食べる事にした。



テーブルと椅子があるところに移動して食べた。



「そういや、ホテルって晩ごはんあるんちゃうん?」


「あっ!ほんまや!忘れてた」


「そう言う民宿も、晩ごはんあるんやけどな、あははっ」


「川上君どうするん?」


「田中がどうするか聞いてからにしようと思っててん、あははっ」


「ずるい、ウフフ」


「さて、どうしようかな?ほんま」


「私達のホテルは、8時までに食堂に行かなあかんねん」


「俺らのところも、そんな感じやったで確か」


「今、まだ6時やし1回戻って晩ごはんキャンセルしに行く?」


「そやな、これ食べ終わったらバイクでサッと行って戻ってこよか」


「うん、ごめんね」


「ええって、俺らも一緒なんやし」


「うん、ありがとう」


「一応、花だけでも探して言うといた方がええな、心配したらあかんし」


「そやね、食べたら花井君といつか探そ」



屋台のお好み焼きとフランクフルトを食べ終わって、適当に歩きながら花を探す。


健太「おぉ!隆、楽しんでるか?」



後ろから健太の声がして振り返える。


俺「あぁ、まぁ健太でもええわ」


健太「ええわって何や!ええわて、失礼なやっちゃな」


俺「俺と田中、1回民宿とホテルに戻るから」


健太「何!?エロい事でもしに行くんか!?」


俺「アホか!晩飯キャンセルしに行くんや!祭りにいたら時間間に合わへんやろ」


友子「二人って、もうそんな関係なん?キャハハ」


俺「友子ちゃん今、説明したやんな?」


田中「もう!友子ちゃんと聞いて」、すぐ戻って来るから花井君といつかに会ったら伝えといて」


友子「はーい!」


健太「はーい!」


俺「ええ加減シバくぞ」


健太「シャレやんシャレ、あははっ」


俺「ほな、ちょっと行って来るからな」


健太「分かった」



とりあえず、健太には伝えたしすぐに俺と田中は民宿とホテルに晩ごはん迄には帰れない事を伝えて戻った。


俺「これで、祭り楽しめるな」


田中「そうやね」


俺「次、たこ焼きでもいっとこか?」


田中「食べてばっかりやね川上君、ウフフ」


俺「まだ腹減ってんねん、あははっ」


田中「あそこにジャンボたこ焼きあるよ」


俺「おっ!よっしゃ行こう」



俺は、無意識に田中の手を持ってジャンボたこ焼きの屋台に急いだ。



屋台のお兄さんに「たこ焼き二つ」と言ってお金を出そうとして田中の手を握っている事に気付いた。


俺「あっ、田中ごめん」


田中「んーん」


屋台のお兄さん「はい!たこ焼き二つ、ありがとう!」


俺は、たこ焼きを受け取り適当に歩いてベンチを見つけて座った。


俺「田中、ここでええか?」


田中「うん、ええよ」



俺と田中は、さっき手を握っていた事を少し照れながら熱いたこ焼きを少しずつ食べた。


田中「祭りなんか、あの時以来行ってへんわ私」


俺「そうか、ほんなら中2の夏以来か?」


田中「うん、中嶋君のあのひよこどうなったんやろ?ウフフ」


俺「今は、ちゃんと鶏になったらしいで」


田中「ちゃんと鶏になるまで育てたんやね、ウフフ」


俺「でもあの鶏、オスやったみたいで卵産まへんし朝4時から鳴くらしいで、あははっ」


田中「ほんまに?ウフフフフフ」


俺「ほんまほんま、健太嘆いてたもん」


田中「今日は、ひよこ釣りしてへんやんね?ウフフ」


俺「またやってたら、だいぶアホやで、あははっ」


田中「懐かしいな……」


俺「そうやな、でもええ思い出や」


田中「うん」


俺「今度は、京都の祭り行ってみようや」


田中「そうやね、京都は祭り多いから色々あるよ」


俺「俺、祇園祭行ってみたいな」


田中「私も1回行ってみたい」


俺「あれって今年は終わってるやんな?」


田中「んー、どうなんやろ?」


俺「田中、地元やのに分からへんの?あははっ」


田中「祇園祭の近所やないもん分からへん、ウフフ」


俺「ほな来年やな、来年一緒に行こうや」


田中「うん、行こう」


俺「よし!決まり!ほんなら祭り色々回ろうか」


田中「うん」



夕方から祭りに来ていた俺達は気付かなかったが、日が沈む頃になって祭り客が増えて来ていた。


俺「結構、人増えて来たな」


田中「うん……」



歩いていても、歩きにくいくらい人が増えて来た。



その時、俺の右手にそっと握ってくる感触があった。



右側に目をやると、恥ずかしそうにしている田中の顔があった。



恥ずかしそうにしながら田中はこちらを見て「はぐれたらあかんし……」と言った。


俺「そやな」



俺も緊張のあまり、それしか言えなかった。



田中「いや?」



それがかえって田中にそう思わしたみたいだった。



俺「全然……どっちか言うたら嬉しいわ」


田中「ウフフ、良かった」



しばらくお互い何も言わずに屋台を回った。


俺「田中、甘いもんいらんの?」


田中「りんご飴食べようかな」


俺「よし来た!探そう」


田中「あそこ見て見て!」



祭りの主催者みたいな人たちが、テントの下にいた。



通り沿いにテーブルがありテーブルの下には「祇園祭り」と大きく書かれていた。


俺「あははははっ!こんなところで祇園祭来れると思わへんかったな」


田中「同じ名前の祭りってあるんやね、ウフフ」


俺「来年は、京都の祇園祭やで」


田中「ウフフ、うん行こう」


俺「偶然って怖いな、あははっ」


田中「ほんまにね」


俺「あっ!あそこにりんご飴あるで田中」


田中「ほんまや、行こう」



俺達は、りんご飴の屋台に向かった。



りんご飴の屋台の前に行くと、りんご飴の大と小とイチゴ飴もあった。


田中「イチゴ飴もいいなぁ」


俺「両方買ったら?」


田中「うー……二つはちょっと……」


俺「ほな、俺がイチゴ飴買うわ」



俺は「イチゴ飴と、りんご飴の小一個ずつ」と頼んだ。


俺「はい!田中、りんご飴」


田中「うん、ありがとう」



田中はさっそくりんご飴を食べ出した。



田中「川上君、イチゴ飴食べへんの?」


俺「あぁ、これビニールかぶってるから田中持って帰れよ」


田中「川上君食べてええよ、あとでちょっと貰うから」



田中は平気で言っていたが、思い切り間接キスに俺は考えただけで倒れそうになった。


俺「いや、あの……」


田中「え?」


俺「いや、まぁええんやけど」


田中「どうしたん?」



りんご飴を舐めながら怪訝な表情をしている田中が可愛すぎて何も言えなかった。


俺「いやいや、食べる食べる!」



俺達は手を繋ぎ、りんご飴とイチゴ飴を食べながら歩いていた。



「はたから見たら恋人同士やろうな」などと思いながら歩いた。



漁港に出たので「港から海見ぃひん?」と俺が言った。



田中がこちらを見て「ウフフフフフ」と笑った。


俺「どうしたん?」


田中「川上君、イチゴ飴似合わへんなぁっと思って、ウフフ」


俺「だからやるって言うたのに」


田中「ウフフ、んーん川上君も一緒に食べて欲しいもん」


俺「何やそれ、あははっ」



漁港に出たら、急に人が少なくなった。


田中「りんご飴食べながら夜の海見るのって変な感じ」


俺「でも、ここの人らは普通なんやろな」


田中「うん」


俺「海、見るの飽きひんな」


田中「交換しよ」


俺「えっ?何を?」


田中「りんご飴とイチゴ飴」


俺「いや、でも俺ベロベロ舐めた後やで」


田中「川上君そういうの気にするん?意外」


俺「いや、田中がええんやったらええけど」


田中「ええよ、はい交換」



俺は、田中とイチゴ飴とりんご飴を交換した。


俺「俺は田中が、そういうの気にせぇへんのが意外」


田中「えぇ?何で?兄弟いたら普通やない?」


俺「あぁまぁ舞とは普通にするな、そう言えば」


田中「知らない人やったら嫌やけど、川上君やし大丈夫」



俺は、りんご飴を見て生唾を飲み込んだ。



田中はもう普通に俺と交換したイチゴ飴を食べていた。



俺も、田中と交換したりんご飴を舐めたが鼻血が出るのではないかと思うくらい興奮した。



俺「でも、間接キスになるやん」


田中「あー!そんな事考えてたん?」


俺「考えへん?普通」


田中「考えへんかったけど、そうなるやんね」

「そう考えたら食べにくくなったやん」


俺「いやいや、もう今さらやろ!あははっ」


田中「川上君が変な事言うからやん、ウフフ」


俺「もう俺は大丈夫やけどな」


田中「んー……もう」


俺「ほな、ほんまにキスしたら食べれるんか?」


田中「えっ!」


俺「普通にキスしたら間接キス気にならへんのかな?と思っただけ」


田中「そう考えたら、そうなるやんね?」



俺は田中を見た瞬間、自分を止められなかった。



繋いでいる右手を離して田中の腰に手を回して自分の方に引き寄せた。



田中は、丸く大きく目を見開いたが俺は田中に顔を近付けた。



田中が目を瞑った瞬間、唇と唇が合わさった。



すごい柔らかい感触、泣きそうな感情が俺を突き抜けた。



ゆっくり唇を離そうとした瞬間、田中の左手が俺の背中に回った。



その手は力強く、でも震えていた。



俺も、田中の腰に回した手に力を入れた。



しばらくお互いそうしていた。



自分の中では一時間にも二時間にも思える時間の中で、田中美幸という女性に俺は愛を感じた。



少しずつ田中に回した手の力を緩めると田中の左手の力も抜けていった。



そして、合わさっていた唇が離れた。



田中がうつむき、俺の胸に顔を埋めて左手で胸の辺りのTシャツを握って「好き……」と言った。




俺は右手で田中の後頭部に手をやり「俺も好きや……」と言った。



田中の艶々した髪の毛を初めて触った。



昨日から夢を見ているみたいに、田中とは初めての体験ばかりだ。



田中が俺の胸の辺りのTシャツを掴みながら顔を埋めて「私はずっと前から好き……」と言った。



俺は「良かった……」と言ったら田中が離れた。



俺を見上げて田中は「ほんまに?」と聞いてきた。


俺「あぁ、ビンタされる覚悟でしたからな」


田中「ウフフフフフ、それやったらりんご飴交換してへんから、ウフフ」


俺「あぁそっか、でも急に悪かった」


田中「そんな事言わんといて……」



田中は海を見ながら言った。



俺も海を見ながら「これでイチゴ飴食べれるな、あははっ」


田中「ウフフフフフ、ほんまやね」


俺「何か不思議やな、久しぶりに会ったのに」


田中「私はあのままずっと川上君と一緒に居ても、こうなってたと思う」

「というか、思いたい……」


俺「そうかもしれんな」


田中「私の気持ちも伝えられて良かった」


俺「聞けて良かったわ」


田中「危うく川上君だけ気持ち言って、逃げられるところやった」


俺「逃げるて人聞き悪いな、あははっ」


田中「だって川上君だけさらっと気持ち言うて、答えてもらわんでええしって言うから」


俺「あぁ、何かずっと言いたかった事言うたら満足してな、あははっ」

「悪かった、ごめん」