俺「ここにおったんか?」


健太「おぅ!やっと来たな、交代してくれ!」


花「ボート持って来たんか?」


俺「なかなか面白そうやな」



俺たちは手分けしてボートに空気を入れた。



ボートに空気を入れ終わった俺たちは海に走った。


砂浜に岩が飛び出していて、砂浜がいくつかに分かれている。


健太「隊長!あっちの砂浜にギャル2名が沖に流されている模様!」


花「また何か始まったな」


俺「海やしな、しゃーないんちゃう?あはは」


花「ほんなら行くか」



俺たち3人はボートに乗り込み、健太がオールを漕ぐ。


花「あの女の子二人、マジで流されてるみたいやな」


俺「ほんまやな、浮き輪してるから大丈夫やけど」


健太「隊長!ボートが定員オーバーで進みません!」


俺「は?」


健太「隊長!失礼します!」



健太が、俺の両足を掴んで勢いよく上に上げた。



俺は、後ろ向きに頭から海へ転落した。


俺「お前!コラ健太!」


健太「遭難者の為、悪く思わないで下さい!」



そう言うと、健太は敬礼していた。



俺は、泳ぐのがあまり得意ではないが何とか砂浜までたどり着いて、砂浜に片手を付いて座り込んだ。


「あのアホめ、ハァハァ帰って来たらジャーマン決めたんねん!ハァハァハァハァクソハァハァ」



俺が座り込んで健太と花を見ていると、後ろから声が聞こえた。


「あっ!中嶋君と花井君が助けに行ってくれたんや、じゃあ大丈夫やね」


「あぁ」



俺は、普通に返事をしたが名前を知っている事にびっくりして後ろの人物を見上げた。



日差しが逆光になって顔が見えない。


「久しぶりやね、川上君」



聞いた事のある声だ。



いや………



ずっと聞きたかった声だ。



俺は、日差しを手で遮って顔を見た。


「田中!」


「ほんまに久しぶりやね、こんなところで会うって奇遇やんね、ウフフ」



俺は、一気に立ち上がり田中に顔を近づけて見た。


「ほんまに久しぶりやな!」


「みんな元気そうやね」


「田中……何で急におらんようになったんや……みんな心配しててんぞ」



俺は、泣きそうになりながら必死に堪えた。


「うん、ごめんなさい……お父さんの会社が潰れて急に引っ越す事になって、学校から帰ったら親が引っ越しの準備してて次の日には静岡県に行ったんよ」


「そんな事があったんか……」


「あっ!友子といつかがボートに乗ったよ!川上君」



俺は、健太と花の方に振り返った。



女の子二人はボートに乗り込み、健太がボートを降りてボートに掴まり、花がオールを漕いでいる。


「救助完了やな、あはは」


「良かった……」


「ほんま救助出来て良かったな」


「そっちやなくて、また会えて良かったって意味の方」


「あぁ、そっちか?」


「そうそっち、ウフフフフフ」


「俺は、もう二度と会えへんと思ってたからな」


「私は、いつか絶対にみんなに会いに行こうと思ってたで」


「もっと早く来てくれたら良かったやん」


「ほんまやね、でも私もあれから色々あったんよ……」


「そっか………あれから2年半やもんな、色々もあるわな」


俺と田中は、ボートの4人を見ながら話していた。


「そっちは、相変わらずでしょ?」


「こっちも、色々あったで田中がおらんようになってから」


「佐知子は元気にしてるん?」


「まぁ、元気は元気やと思うで」


「え?どういう事なん?」


「またその話は後やな、ボート帰って来たで田中!」



俺は、海に走って行きボートを引っ張って砂浜までたどり着いた。


田中「友子、いつか大丈夫?」


友子「ヤバかったぁー!なぁいつか」


いつか「うん、このまま韓国まで行くかと思った」


健太「どこまで行くねん!」


花「ハハハハハッ」


健太「ちゅうか田中ちゃうんか!?」


花「うわ!ほんまや!田中やん!」


田中「中嶋君、花井君、久しぶりやね」


健太「あぁ、久しぶり!」


花「久しぶりやな!」



そう言うと、健太と花は同時に俺を見てきた。



俺は、照れもあって手で「シッシッ」っとした。


友子「美幸、知り合いなん?」


田中「うん、大阪にいた時の友達やねん、中嶋君と花井君と川上君」



手を差し出して俺たちを紹介してくれた。


田中「それで、こっちが「友子」と「いつか」」



田中は、そのまま俺たちに女の子二人を紹介してくれた。


花「オール漕ぎすぎて喉渇いたわ、何か飲みに行かへん?」


健太「ええな、行こうや」


花「友子ちゃんといつかちゃんも行こう」


友子「奢りぃ?アハハ」


いつか「ちょっと友子…初対面やのに」


花「いつかちゃん、ええってええって、隆は買って来るからボートの見張りな」


俺「分かった」



花は、気を使って田中と二人にしてくれた。


田中「今ね、京都に住んでるんよ」


俺「あれ?静岡に行ったんちゃうん?」


田中「うん……大阪から静岡には行ったんやけど……私ってお父さんとギクシャクしてるって話し覚えてる?」


俺「あぁ、覚えてるで」


田中「お父さん、会社も潰れてストレスも溜まってたんやと思うんやけど……ちょっとした事で口論になって私が家を出て行く事になってん」


俺「ほんで……言い方悪いけど、田中だけ追い出されたんか?」


田中「正直、追い出されたんが正解やねん、ほんで今は母方のお婆ちゃんの家に住んでる」


俺「そうか……色々あったんやな……」


田中「そっちの色々あった話しは?」


俺「こっちの色々あった話しか……」


田中「言いにくい事?」


俺「言いにくいと言えば言いにくいかな?」


田中「じゃあ言わなくてええよ」


俺「いや…話さなあかんな」


田中「そうなん?」


俺「田中らは、今日帰るん?」


田中「私達は、今日と明日泊まって明後日帰るで」


俺「おっ!一緒やな、ほんなら今日の夜に二人で話さへんか?」


田中「夜?ええよ」


俺「どこに泊まってんの?」


田中「あれ」



田中が指を指したのは、この砂浜から一番近いホテルだった。


俺「俺らの民宿とは、えらい違いやな……」



小さい声で言った。


田中「えっ?」


俺「いや、なんでもない……ええホテルやな、ほなこの砂浜で夜話さへん?」


田中「うん、じゃあ晩御飯食べたらここに来るから、7時から晩御飯みたいやから8時くらいにここでええ?」


俺「ほな8時にここで」


田中「うん」


俺「そういえば、茜ちゃんは?」


田中「静岡にいるで」


俺「そっか…」


田中「うん、でも私が家を出るときに一番お父さんに反対してくれたんは茜やねん」


俺「なんだかんだ言っても、茜ちゃんは田中になついてたもんな」


田中「そうやね、今は元気にしてるかも分からへんけど……」


俺「全然会ってないん?」


田中「うん、京都来てからは一回も会ってへん」


俺「みんな、バラバラになってもうたんやな……」


田中「舞ちゃんは元気?」


俺「舞は元気元気!あははっ」


田中「舞ちゃんも川上君に凄いなついてたやんね」


俺「今は、俺が舞になついてるわ、あははっ」


田中「えぇ?そうなん?意外!」


俺「舞も、もう中学1年でしっかりしたしな」


田中「そっかぁもう中学生かぁ、私と川上君が初めて会ったのも中学1年やったやんね」


俺「そういやそうやったな、屋上で1人怒りながらパン食べてたやんな」


田中「ウフフフフフ、それ言われるのも懐かしいなぁ」


俺「あははっ、確かに懐かしいな」



田中と話していると、あっという間に時間が過ぎた。



いつまで話していたかた、どれだけ話していても時間が足りない気がした。



2年半話していなかった分を、取り戻すように俺と田中は話した。



ジュースを買いに出て、健太たち4人は何故か1時間くらい帰って来なかった。


健太「お待たせぇー!」


俺「どこまでジュース買いに行っててんお前らは」


友子「あっついから、かき氷食べて来た!あははは」


花「まぁ、そういう事や」


俺「どういう事や」


いつか「はい、ジュース」


俺「あっ!ありがとう」


田中「ありがとう、いつか」


いつか「いいよ」


健太「ほんなら俺は海行ってくるで!」


花「俺も行くぞ!」


友子「健太君、ボート乗っていい?」


健太「友子ちゃんの頼みなら何でもきいちゃう!」


友子「いつか一緒にボート乗ろう」


いつか「いいよ」


俺「もう仲良くなってるし、あははっ」


田中「やっぱり水が苦手な私達が残るんやね、ウフフ」


俺「そういや、あのプールの時もそうやったな」


田中「うん、私が溺れかけて川上君が助けてくれた時の事」


俺「あったあった、あははっ」


田中「私達、変わらへんね」


俺「2年半経っても変わらへんな」


田中「川上君は、ずっと変わらへんねやろうな」


俺「なんや俺は成長せんみたいな感じやな、あははっ」


田中「そういう意味やないで、雰囲気とか中身とか」


俺「そうかな?」


田中「うん、何か一緒にいると落ち着く感じとか、久しぶりに会っても久しぶりな感じがせえへんわ」


俺「田中は、見た目凄い大人になったな」


田中「そう?」



実際、田中は大人の女性という感じになっていた。


俺「うん、中身は前の田中のまんまやけどな」


田中「そうかな?」


俺「見た目はしょうがないけど、田中は変わらんといて欲しいな」


田中「えぇ?」


俺「いつまでも何年後も、こうやって話したいなと思ってな」


田中「そうやね、川上君とはずっとこうやって話せそうやんね」


俺「そうやな、またあの時みたいにみんなで遊びたいな」


田中「いつかまた、みんなで遊びたいなぁ」



何年後でも何十年後でもいい、いつかまたみんなであの頃のような関係に戻りたいと思った。



俺「後で一緒にボート乗らへんか?」


田中「ええよ、ボートってあの時以来やね」


俺「公園の池のボートやんな?懐かしいなぁ」


田中「今は、あの頃の全部が懐かしいわ」



友子といつかがボートに乗って帰って来て、俺と田中はボートに乗って少し沖のほうまで行ってみた。



色々話している内に、沖に行き過ぎたので砂浜に戻る事にした。



田中は少し怖がっていたのが、可愛く感じた。



やっぱり俺は、田中の事が好きなんだと実感した。



砂浜に戻ると、夕方になっていたので田中達と俺達は各々の宿に戻る事にした。



宿に戻ると、早速健太がチャチャを入れて来た。


健太「どうなのよ?久しぶりに会った愛しの美幸ちゃんは?えぇ?えぇ?」


俺「今の健太で台無し!」


花「ハハハハハ」


健太「でも偶然もここまで来たら奇跡やな」


花「確かに言えてる」


俺「ほんまにびびったな」


健太「これで連絡先交換して一件落着やな、ほんで俺も友子ちゃんとムフフやな」


花「健太は友子ちゃんにラブラブか?」


健太「そや!隆に全てがかかってるんやからな、頼むぞ我がキューピットよ!」


俺「健太、友子ちゃんに惚れたんか?」


健太「おぉよ!もう死にそうなくらい惚れた!」


花「ほないっぺん死ね」


俺「あははははっ」


健太「しどい!しどいわ貴方達!」


花「でも、ほんまに良かったな隆」


俺「そうやな、今日会えただけでも良かったわ」


健太「無視か!?お前ら!」


花「健太うるさい、ほんで隆どうするんや?」