「おぉ。悪い悪い、」
そう言って火を消してないタバコを放り投げた男。
下はフローリングだ。
火がついたっておかしくない。
俺は慌ててタバコに近くにあった水をかけた。
完全に火が消えたとき、
改めて俺はそいつに怒鳴った
「火がついたらあぶねぇだろ!!」
と。
男は笑いながら言った
「こんな潰れかけの道場、燃えたって誰も困んねぇよ」
は?
困るやつはいるよ
修平師範とか、明歩とか、
……俺とか。
なんで俺が困るのかわかんねぇけど。
「あ?それかあれか?新しい師範でも見つけて来たのか?」
男はありえないだろとでも言いたげな様子でそう言った。
むかつく。
なんかこいつの笑い方、気に食わねぇ。
「ーーー……………そうだよ。」
修平師範が倒れたから、代理でってことだろ?
だったらやってやるよ。
修平師範の代理、俺が見つけてやるよ。
「え、恭弥くん?」
明歩の驚いた声が聞こえた。
「黙って。少し話し合わせてよ」
俺は小声でそう言った。
明歩はこくんと頷いた。
「ほう…?で、どこのどいつだ?」
男は予想外の返事だったのか、
少し驚いてから冷静になり、聞いてきた。
「……」
俺が黙る。
ここで今から見つけますと言ったら、また嘲笑われるし、
今更いませんとも言えない
どうする……
俺が悩んでいる後ろから声が聞こえた
「この人です!」
と。
「明歩!?」
俺は小声で明歩に声をかけた



