カタキに恋をした。




───…俺は、目の前で両親を女に殺された。



その女は、見た感じだと年は俺とさほど変わらなくて。

当時の俺のように、幼かった。


だから、今は俺と同い年か、前後…。

最初は、ソイツに会って倒すために雲龍を作った。


今でもそれは、変わらない。


なぜ俺の両親を殺したのか。

なぜ俺は殺さなかったのか。


聞きたいことは、山ほどあった。




女はとてもきれいな顔立ちをしていて、まるで人形のようだった。


脳味噌に焼き付いているのは、女の首に付いていた、機械的な首輪と、白眼まで黒く染まった瞳。





…絶対探し出して、仇をとってやる。



なに、殺す訳じゃない。

殺したらその女と同じになるからな。


だけど…半殺しなら?

大丈夫、殺してない。

半殺しにするだけだ。


虫の息にして、聞きたいことを聞いて、それから…


陸「…れ、時雨!!」

「…ッ、え?」

陸「…顔が怖かった。」

「あぁ、わりぃ。」

陸「時雨、やっぱりまだ気にして…」

介「それにしてもさぁ、なんであの女は平気だったわけ?」


介が誠を遮った。


まるで、“その話は時雨の前でするな”とでも言いたげに。




俺はそれに気付かないフリをする。

いつも通りだ。


「わかんねぇ。

俺は、なんで『気をつけろ』なんて言ったんだろうな…?」

介「オレらに聞くなよ~」

陸「聞かれても、分からない。」



…だよな。



「…。」

俺は女が走っていった方向を眺める。



なんで急いでたんだろう。

なんで目が悪くなったんだろう。

なんで前髪切らないんだろう。

なんでマフラーしてたんだろう。


なんて白い肌なんだろう。

なんて綺麗な髪なんだろう。



なんて綺麗な声なんだろう。













気付けば頭の中は、あの地味女でいっぱいだった。


「…こんなのって、アリかよ。」


俺は、誰にも聞こえないようにポツリと呟く。


あの地味女に。

あんな女に。




また会いたい、なんて思ってしまったから。