カタキに恋をした。



「…テメェ女になにやってんだ!!」


俺がそう叫ぶと、島田の周りにいた数人の1人が「あ゙ぁ!?」と言った。

なんも怖くねぇんだよ。


瑛「…ッ東雲、またテメェか!!

今日こそケリ付けようぜ。」

「おかしいな、ケリはとっくについてるはずだろ?」

瑛「テンメェ…!!」

介「おーおー、怒鳴ることでしか威嚇できねーのかよ~」

陸「まるで小動物だな。」

誠「介にぃ、すぐ挑発するクセ直しなよ。」

霧矢「…ッ、外道が…!!」


後から来た皆が次々に声をかける。

特に霧矢は、今にも飛びかかりそうだ。


瑛「ッ…分が悪ぃな。

今日は引く。だが勝ったなんて思うんじゃねぇぞ!!」


そう言って、島田たちはどこかへ行った。





誠「…ふぅ、大丈夫?」


助けたヤツに声をかけるのは、誠の役目。

俺らはどう声かけて良いかわかんないし、場合によっては怖がらせるかもしれないからだ。


誠は一番怖くないし、女顔だし、背もちっさいから怖がられる確率はきわめて低いんだが。


「…っあ、スミマセン。

ありがとうございました…!!!!!」


助けた女は、透き通った声をしていた。

思わず振り返ると、そこには…






結構、地味な女。







眼鏡は顔に合っておらず、髪型はごく平凡な耳下の2つ結び。

綺麗な茶髪だが、前髪が長すぎて陰気くさい。

寒くもないのにマフラーを巻いている。


前髪が長いのと眼鏡が太陽の光を反射したのとで、女の目は見えない。


「ホントに、ありがとうございました!!

助かりました!!!

ありがとうございました…!!」


…フッ、何回お礼言うんだよ。


「それじゃ…」

「…あ、ちょっと待て。」

「は、はい…?」

「…気をつけろよ。」

「…っっっ、はい!!」


そう言って女は走っていった。


介「…あーあ、今の女の子、絶対時雨に惚れたよね~。」

誠「介にぃ、そういうことは言わない方が…」

「なんでだ?」


今のどこに惚れる要素があったんだ?


陸「…時雨、今のヤツ知り合いなのか?」

「いや、知らないけど。」

陸「…女、平気になったのか。」

「…あ。」



…確かに、アイツは平気だった。

なんでだ?

俺は女が苦手なはずなのに。