時雨「…なぁ、楓。」
「はい…?」
時雨「オマエはさ…両親が死んだとき、悲しかったり、泣いたりしたのか?」
…両親、か。
「…分かりません。
覚えてない、というよりは、記憶にないんです。
母さんや、父さんのこと…
一切、記憶にないんです。
だから、よく分かりません。」
あたしは、困ったように笑った。
時雨「…じゃあ、オマエは親に甘えたことがないのか?」
「甘える、ですか…
うーん、“甘える”って一口に言いますけど、あたし『甘え方』知らないんです。
甘えるって、どうやってやるんですかね?
…って、こんなんじゃ女子失格ですね。」
そう言って、あたしはまた、たははと笑った。


