「失礼しました…」
あたしは保健室を出て、下駄箱に向かった。
昨日の倉庫の場所は覚えてる。
家から近かったし、昨日は頑張って道を覚えながら歩いてたから。
『誰も私を止めることはできない。
止められないのよ。』
あの時の、切なげなカズサの声────…
あの声が、あたしの頭の中をぐるぐると回った。
どうして、そんな声出すの?
カズサは、族潰しを趣味とするような、一家全員を皆殺しにするような、栄えた家に火をつけるような、人の命を何とも思っていない、酷い人でしょ?
なんでそんなに、悲しい顔してるの?
介「あ、楓チャンきたよー」
下駄箱に行くと、介君たちがいた。
待っててくれた、のかな…。
時雨「保健室に迎えにいこうと思ったんだけど、コイツらがウルサくて安静に出来ねぇかと思って。
保健室まで行った方がよかったか?」
それはなんでも過保護過ぎなのでは…
「大丈夫です。
それより、行きましょう。」
時雨「…楓、なんかあったか?」
「へ…?」
し、しまったぁ………………!!
不意打ちすぎて、変な声が出てしまった!!
「かっ、介君、笑わないでください…!!」
介「いや、『へ?』って…!!
なかなか出ないって、それ…wwww」
「な、なんでそんなこと聞くんですか?」
失敗を紛らわせるために、あたしは時雨君に、そんなことを聞いた。
時雨「いや…
なんか、悲しそうな顔してたから。
…なんかあったら、俺に言えよ。
もう、昔の俺みたいなヤツを見るのはゴメンだからな…。」
「え…」
時雨「…ッあ、わり!!
なんでもねぇわ。」
なんだろう、今の時雨君の顔、とっても悲しそうで、切なそうで、苦しそうで…。
なんだか、あたしが守ってあげたいと、思ってしまった。


