介「そんじゃ、お大事に~」
介君が最後にそう言って、保健室の扉を閉めた。
それと同時に、《声》がする。
“随分と馴染んでるみたいね。”
《カズサ…ッ!!》
今夜、カズサは必ず動く。
それを知った上で、止めないほどあたしは馬鹿じゃない。
《今夜は、絶対行かせないから…!!》
“あら、もうバレちゃった?
ずいぶんと速かったわね。”
《ゼッタイ…止めてみせる…ッ!!!》
“無理よ。
薬を飲んでも、頑張れば出ることはできる。
アナタは私に、勝てないわ。”
《ならっ、今度は2人で…!!》
“ああ、東雲時雨と約束したんですってね。”
《そう…今回は、止める!!!》
“…無理よ、いくらアナタでも。
誰も私を止めることはできない。
止められないのよ。
『脅し』が嫌いだって、アナタも知っているでしょう?”
どうして…
《どうして、そんな言い方するの?
、、、、、、
まるで、止めてほしいみたいな────…》
“…。”
《都合の悪いときだけ引っ込まないでよ、ねぇ──────…》
“…そんな言い方、してたかしら?”
《トボケないで。
ホントは…カズサも、し、時雨君の…彼の優しさに触れて、本音が出たんじゃないの?》
“フッ、アハハ。
ふざけないでよ。
私さすがにあそこまで甘っちょろくないわ。”
《でも、さっきのは…!!》
「筏井さん、そろそろ放課後だけど、体調はどうかしら~?」
丁度バットタイミングで、保健室の先生の声があたしにかかる。
“ほら、先生が呼んでるじゃない。
それじゃ、また今夜。”
一瞬気をとられた隙に、カズサの声は完全に消え去っていた。


