カタキに恋をした。


「そうでしたか…。
今先生お呼びしますね!」

いつだって、なんだってコイツの思い通り。
腹が立って仕方がない。

そうと分かっていて抗っている私もきっと、駒の一つなんだろう。

秋斗「じゃあ、私は帰るよ。
お前も、速く帰っておいで。

まあ、それは彼次第だけどね…!」

汚いセリフを吐き捨てて、筏井秋斗は帰っていった。

…もうすぐ、戻ってしまう。
忘れかけていた、あの地獄のような日々に。

鳥籠の中の鳥、もしくはそれ以下の生活に。

「この首輪がある限り…私はどこにも行けない。

永遠にアイツの駒。

ましてや自由なんて、手に入らない。」

分かってる。
分かってるのに、どうして。

「どうして私は、自由に手を伸ばすの…」

手に入らないと。

のばしても届かないと知っているのに。

絶対に無理と分かっていて、それでも手を伸ばす。

「ねぇ、どうしてこんなことになっちゃったのかな。

世界に2人だけの家族だったけど、それなりに幸せだった。

巨額のお金なんて必要なかった。

兄さんさえいてくれれば、良かったのに…」

あのころが、懐かしい。

あのころに、戻りたい─────…


いくら願ったって、そんな事はできない。

過去に戻ることも、自由を手に入れることも。

あたしにはできない。

  イマ
“現在”から逃げることも。