介「楓チャン、ありがとね。」
誠「筏井さん、ありがとう。」
…あたしは、2人の心を伝える橋渡しをしただけだよ。
絡まった糸を、ほどいただけだよ。
「どういたしまして!」
2人を見ていたら、なんだかあたしまでうれしくなって、久々に心から笑った。
時雨「……楓。」
不意に、時雨君に呼ばれる。
「?なんです………わぁっ?!」
急に腕を掴まれ、バランスを崩して後ろに倒れる。
幸いソファーがあり、あたしはポスッ、と軽い音を立ててソファーに落ちた。
時雨「あんま誰にでも、ヘラヘラしてんじゃねぇよ………」
耳元でささやかれ、その低い声にゾクッとする。
「へ、ヘラヘラなんてしてませんよ?」
時雨「してる。
してんの。
あーもう、なんで俺がこんな…
クッソ、だせぇな俺…」
不機嫌そうに頬を染めた時雨君を、介君と誠君がニヤニヤしながらみる。
介「あら?あらら!
これは恋しちゃったんじゃないのー??」
誠「ホーント、もうこれは付き合うしかないんじゃないのー??」
時雨「うるっせぇな!!////
黙れクソ兄弟め!」
介「黙んねーw」
誠「なー」
介「だってオレら、兄弟だからー」
誠「一心同体って奴なんでーw」
時雨「よくねぇとこばっか似やがって!!」
介「しょーがねぇだろー?
これがオレら兄弟なんだからサ!」
嬉しそうに、笑いあう2人。
その光景が、いつかの2人と重なり合う。
『オニィー!』
『カエデ!』
『エヘヘ…』
『アハハ…』
懐かしい、あの頃。
もう二度と戻れない、あの頃────…
時雨「………楓?」
時雨君の声で、ハッとする。
「なんですか?」
時雨「いや、なんか悲しそうだったから…」
「…そうでしたか、でも
そうでもないですよ?」
今は、とても楽しい。
こんな日々が、ずっと続けばいいのに。
いつかはくるであろうその日を考えないように、そっと目を閉じた。


