「誠君は、介君のことを分かってません。
しかし、同様に介君もまた、誠君を理解していません。
あたしが語るのもおこがましいと思いますが、あたしの見解を話します。
…介君は誠君のことを、ちゃんと考えています。
憎んでなんかいないんです。
もしそう思ってるなら…それは、自己暗示です。
介君は、誠君に嫉妬してしまう自分が嫌いなだけでしょう?
その思いが歪んで、“憎しみ”という自己暗示に変わってしまったんです。
でももう、許してあげてもいいんですよ。
誠君に嫉妬してしまう自分を、もう許してあげてください。
それは普通のことなんです。
介君は、他の人より少しだけ、繊細で、些細なことでも考え込んでしまう人なんです。
だから、そろそろ終わりにしても、
楽になってもいいんですよ。」
相手のことを考えすぎてしまうが故に、自分が見えなくなってしまうのだから。
「……そんな介君が、誠君を蹴落としてまで楽になりたいと思うと思いますか?
できるわけないですよね?
だから誠君、あなたも一緒に抜け出すんです。
2人とも、互いを思いすぎたために、その感情が交差して、形を変えてしまったんです。
考えすぎずに、まっすぐお互いを見つめてみませんか?
きっと真実が、本当の自分が見えてくるはずです。」
介「オレは、誠が羨ましくて……
誠に嫉妬してる自分が、嫌いで…」
誠「俺は、兄さんに笑ってほしくて…」
「介君も誠君も、自分を認めてあげてください。
自分の頑張りを、褒めてあげてください。」
介「…オレたち、ちゃんとお互いのこと考えてたんだな。」
誠「どこで、間違えたんだろ。」
介「………さーな。
ただ、オレらは兄弟だってことだろ。」
そっぽを向きながら言った介君の耳は真っ赤で。
誠「………ははっ、介にぃ耳真っ赤。」
誠君は、涙目なのにとてもうれしそうに笑った。


