介「親が大富豪なんだよ。
金も、腐るほどあって。
オレ自身も、勉強は厳しかったけど、蝶よ花よと育てられた。」
あたしは、黙って介君の話を聞く。
ふと気になって皆を見回してみると、誠君が俯いていた。
介「…オレはもともと、一人っ子のはずだった。
そう思ってた。
だけどある日、誠がオレの家にきた。
まだオレも誠もちっちゃくて、第一印象はかわいい、だった。」
さっきの介君の叫びと、だんだんつながっていく。
介「…誠は、オヤジが外で作った子供だった。
オレと誠は、腹違いの兄弟。
最初は、弟ができて嬉しかった。
でも、オレより勉強ができた誠は、いつのまにか両親のお気に入りだった。
オレが誠に勝ってるものなんて、力と礼儀ぐらいだ。
だから、誠に勝つために、誠より自分をかわいがってもらうために、いつも愛想を振りまいた。
俺の耳がずば抜けていいのは、周囲の言葉をすべて聞き取れるようにって考えてたからかな。
周囲の意見を聞いて、皆が喜ぶ人間になろうと思った。
そのころから、オレはうまく気持ちを隠せるようになった。
心の中でなにを思っていようが、オレは常に笑うことができた。
楽しそうに、笑い声もあげた。
みんな、オレの笑顔を疑わなかった。」
…なんて悲しいんだろうか。
嘘の笑顔で周りを欺き、それに気づいてもらえない。
そうやって嘘で自分を塗り固めて、そのまま身動きかとれなくなってた。
そういうことだよね?


