「緒樹菜ー!!!」

教室に戻ると駆け寄って来たのは、小学生の時からの親友の麗(ライ)。

私の一番の理解者で、過去のことも家庭環境もわかってくれている。

「おはよ。」

担任の話とか、どうでもいい話をして、黒板に貼られた紙の座席を確認し座る。

ボーッとしていると色々なことが浮かんできた。




私には親がいない、…正確に言うと亡くなった。

二人揃って交通事故で。

“晩御飯は、カレー作るわよ!„が最後の言葉だった。

兄と二人留守番をしていた私は、親戚からの電話を受けた。

当時小さかった私には、どうしても“死”というものが理解できなかった。

「お母さんはいつ帰ってくるの!?」ってグズって、親戚にも兄にも迷惑をかけた。


その兄も今はどこにいるかわからない。


10年以上前。

私達兄妹は、あろうことか別々の親戚に引き取られたのだ。


私には兄だけだった。

いつも「おき!」と呼んでくれて、

泣き虫で我が儘な私を一生懸命あやしてくれた。

たった一人になってしまった、大切な家族だった。

私はどこに行くのも兄と一緒だった。

兄のことは“くぅちゃん”と呼んでいた。


私は中学生になったあたりから、兄に会いたいと更に思うようになった。


それから兄を探し続けているけど、勿論見つかってなどいない。