「きさ、は、翔ちゃんが
大好きだったよ。響ちゃんを
忘れるための術じゃない。
一緒にいるうちに翔ちゃんが
大好きになったの。
でも、響ちゃんのことを隠して
いるのが申し訳なくなって苦しくて。
だから翔ちゃんに話したの。
でもっ…翔ちゃんは
離れていってしまった。」
連絡が取れなくなってから
はじめて聞く姫咲の気持ち。
俺が響と姫咲のことを考えて
いたあの期間が、姫咲にとっては
離れていってしまったと感じたようだ。
「きさは、翔ちゃんを
傷つけたから…もう側に
いられなかった。
だから、何も言わず、
お父さんの転勤についていく
ことにしたの。ごめんね、翔ちゃん。
それから、翔ちゃんのこと、
忘れたことなかったよ…。
忘れられなかった。でも、連絡も
できなくて、でも、今回イタリアに
翔ちゃんが来るって柚くんが
連絡くれたの…。
到着日と時間も…。
だから、わたしーーーっ!」
姫咲の言葉を遮って
抱きしめた。
「もういいよ、きさ。」
その言葉に姫咲はわーわー
泣きはじめた。
「きさ、ここ空港だよ?」
でも、不思議とだれも俺らを
見てなんてないんだ。
頭をなでて。
「きさ、やり直そう?」
そう言った。

