一夏の恋






姫咲が俺の脚の上に寝転んで
要は、膝枕の状態だった。
体はテレビを向いている。
表情はあまり見えない。


急なことで心臓が飛び跳ねる。




柔らかそうな髪に手を伸ばす。

ふわふわの髪をすくう。



すごく愛おしく想った。





「ねえ翔ちゃん…。」





髪を俺に遊ばれている姫咲が声を発する。

か細くて消えてしまいそうな声。




「私の話、今まで聞かないで
くれてありがとう…。」




なにを急に言い出すかと思えば。


たくさん姫咲に聞きたいことは
あった。けど、今まで聞かなかったのは
姫咲が話してくれるのを待っていた
からではなく、きっと自分のため。



真実を知りたくないから。





姫咲を、失いたくないから。