「あの人に聞こう」

「ええ!?」

「紗理奈、駅員さんの名前は?」

「篠崎、さんだけど…」

彼の名前を言った瞬間、麻弥は私の手を取り、今、目の前にいる駅員さんにこう問うた。

「あの、篠崎さんというお方はいますか?」

ニコッと爽快に笑う麻弥。

私はただ、顔を真っ青にしてたじろいでいるだけだ。

そんなことを聞いたら、絶対に不審者だと思われてしまう。

だが、駅員さんはそんな私をよそに

「ああ、篠崎君は今日は日勤だから昼で仕事が終わりなんだ。明日は休みでいないよ。明後日ならこの時間にいるけど」

と、麻弥の質問に答えてくれた。

「はい、わかりました。ありがとうございます」

麻弥は頭を下げてお礼を言い、私に身体を向けて「篠崎さん、いないって。明日は休みで明後日ならいるってよ」

と残念そうに言った。