「何だよ、帰れなんて言ってねぇだろ?」
「…雰囲気が言ってる」
怖くて、瞳を見ることすら出来ない。
思えば喧嘩なんて、したことなかった。
「じゃあ、帰れば?」
「…うん、そうする」
クシャクシャにした資料をフローリングに投げて、そのまま部屋を後にした。
勢いのまま出てきてしまったけれど、私の住むマンションへは電車で30分程かかる。
「…終電、ないじゃん…」
駅に向かう歩幅が徐々に狭まって、とうとう立ち止まった私の瞳には涙が溜まっていた。
どうして、こんな時に…
喧嘩なんてしちゃったんだろう。
見上げた空は、真っ暗で。月が小さく光っている。
こんな、つもりじゃなかったのに。
何とかタクシーをひろって、家まで帰った私はそのままベッドにダイブして。
何の連絡もない携帯を握りしめたまま、いつの間にか眠っていた。
結婚て、何だろう…
よく分からない。
全部、私が舵をとってやってきた準備もどうでもよくなってきた。
だって、私だけの結婚式じゃない。
ふたりの、結婚式なのに。
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