目覚めれば「両想い?」




「こんばんはレイ?」



こんな真夜中に誰?


レイは寝ぼけまなこで、携帯の着信に応答していた。



「キューピッドのエマ」



その声は、はっきりとそう告げた。




レイ。
「これって夢?」


エマ。
「そう夢!みたいなものよ」


「キューピッドって、恋の矢を撃ってくれる、あのキューピッド?」


「そう、わたしは、恋の天使!」


「っていうことは、私の片思いを叶えてくれるのかなぁ?」


「残念ながら、レイの片思いは叶わないの・・・」
エマは静かに告げた。


「えぇ~?どうしてよぉ~?」
レイは、すがるような目つきで訴えかけた。




「それは、相手が違うってこと。あなたは今まで、本心で望んでいる相手との恋に目を向けないで、相性の合わない相手や、あなた以外の人とすでにカップルになっている相手にばかり好意を抱いてきたでしょ?」

エマは、しっかりと見抜いていた。


「そうなのかな?そう指摘されると、自分でも、なんかわざと叶わない人ばかり追いかけていたような気がする」

レイは、今まで自分が好意を寄せてきた相手を想いうかべていた。




「恋は、人生のレッスンなの!だからね、おたがいのレベルが同じくらい同士じゃないと、なかなかくっつけられないのよ」



「へぇ・・・恋ってレッスン?」


「ココロのレッスン。だから、ココロのレベルが違いすぎる同士では、無理があるってことね」
エマの話には説得力があった。


「じゃぁ・・・わたしは誰を好きになったら上手くいくの?」


「レイ、あなたに好意をもっている男性は、今までもたくさんいたわ。でも、あなたがまるで違う望みを抱いていたから、それに気づけなかったのよ!」


「ほう・・・こんなんでも、わたしを好きな人が、いたんだ?」

レイは、そう云われてはじめて、今まで自分の好きな相手しか目に入らなかった自分に気づいた。

「今も、あなたのことを好きで好きでしかたのない人がいるの。そして、その人とあなたの仲を、恋の毒矢で結ぶのが今回の私の役目なの」


「そう云われてもね、わたしのタイプじゃない人だったら嫌だなぁ・・・」
レイは、ちょっと複雑な気分でつぶやいた。


「それは大丈夫よ。あなたが心配する事じゃないわ、ただ近いうちに・・・」
そこで、電話は切れた。


「近いうちに?何なの?」


それじゃ、意味がわからないわよぉ~


面白い夢だったなぁ・・・

翌朝、目覚めてレイはつぶやきながら大きなあくびをひとつした。


そして一応携帯をチェックした。


キューピッドの夢を見ていた頃に、一件の非通知通話とメールが一通届いていた。


「レイ、俺さぁアンナと別れようと思うんだ。でさ、近々レイと、ちょっと話したいんだけど?」


そのメールは数年来の悪友。ヒデからだった。そしてアンナはレイの親友だ。


「なんでよ?ふたりとも仲良いじゃん?今夜でも良かったら話聞くよ?」
レイは、そう返信した。




昼ごろ、ヒデから返信が着た。
「じゃぁ、よろしく。今夜10時過ぎにかけるから」



「うん。まってる」
と、レイは返した。




夜10時過ぎ。ヒデから着信。


「おう、サンキュー!」


妙に明るくヒデが云った。


「ヒデ、メールで云ってたことホント?アンナにはまだ云ってないんでしょ?」

レイは、早口でまくしたてた。



「まぁ、そういうことなんだけど。アンナにはまだだよ。だって、そういう話は苦手だし俺・・・」



「なんでなのかなぁ?あなた達、相性ばっちりじゃないの?」



「あのさぁ、この間、俺のとこにキューピッドって奴から電話着たんだよ!もちろん、夢だったんだろうけど、なんかやけにリアルで・・・」


レイは、驚いて、心の中で思いっきり


「えぇ~~~~!」


と叫んでいただけで、声にならなかった。


「レイ、聞いてる?夢だからさぁ夢。頭イッテないから大丈夫だよ」

「うん、わかってる」


「でさぁ、そのキューピッドの説教されたのよ。本当に好きな相手に、自分の本心を告げなさい!って」



ヒデは、ちょっと自嘲するように云った。



「ヒデ、ちゃんとアンナに好きって云ってないの?」



「いや、あのさぁ・・・俺、考えたの。キューピッドの云ってる意味。そして気づいちゃったんだよ」


「そう?」


「俺やっぱむりだ」
突然、ヒデは電話を切った。


レイは、電波の調子が悪くなったのだと思い、何度かかけ直したがヒデは出なかった。



その数分後、レイの携帯にヒデからメールが着信した。



「俺、実はずっとレイのこと好きで好きで好きだったんだ!そのことを、キューピッドの夢は云いたかったんだと思うのよ・・・」



レイもその時、自分の本心に正直に目を向けた。



ヒデは、レイからの返信を見るのがちょっと怖かった。


「ヒデ、わたしもかも!」


その、返信を見て迷わず、ヒデは即効でレイに電話をかけた。