「…は?別に悲しくなんかないけど」


…なんで、知ってるの?私が、悲しい気持ちになっていること…。



「そうか?…にしては、毎日見るたんびに悲しそうな顔してっけど」


毎日…?……それって……。


「……あんた、ストーカー?」



「な訳ねーじゃん」




神峰はだるそうに切り返してくる。
『いやいやいやいやいや!!「毎日見る」って、もうそれストーカーの域じゃんよ!』と、ツッコミたくなるのだが…。…うん、あえて言わないでおこう。



「…なんか、友達に隠し事とかしてんじゃねーのか?」



「っ…あんたには、関係ないでしょ」




私は、くずかごに缶を捨てると、逃げるようにそこを後にした。




あいつ…やっぱりあの事に気付き始めてる…!
「あの事」がなんなのかは知らないにしても…よりによって他人に知られるなんて…。








…5時50分をまわった頃。
あの予告時間ちょうどに迎えに来てくれたエレンの運転する車で家についた私は、ちょっとの間、布団の中で体を丸めた。




「…どうしよう。あいつ、絶対感付いてる…」



「お嬢様?どうされたんです?」




「ルビー…」





そこには私の専属メイド、ルビーがいた。ルビーは、私の顔色を窺うようにベットの横に膝を付きながら訊いてくる。
ルビーは、ホラーが好きな留学生で、今は私の家でメイドの仕事をし、給料を自国に仕送りしている。

私は、ルビーにすべてを打ち明けることにした。
家系のことを隠すのがつらいこと、あいつがそのことに気づいてるかも知れないこと…。

すると、ルビーは…あろうことか、こんなことを言ってきた。





「でしたらその方に、すべてを打ち明けてみたらどうでしょうか?」


「は?」


つまり…家系の秘密を、バラせってこと?


「その方は恐らく、お嬢様を気遣ったのだと思われます」

「…でも、私は」







私が返答しようとした途端。







外が、騒がしくなった。