町から離れた野原にある桜の木はやはり文月でも咲いていた。
光り輝くように桜は明るく月に照らされていた。
その根元にはあの柔らかそうな色素の薄い髪の毛……
『総司様』
「んぇ? あ、菊花ちゃん」
目を見開いた総司様は私の姿を写した途端花が咲くように笑みを浮かべた。
『……菊花で宜しいですよ』
「じゃぁ、僕も総司でいいよ?」
ニコニコと笑う総司はポンポン、と自分の隣を叩いた。
……座れ、ということだろうか。
『……失礼します』
「あはは、堅いよ。 もっとリラックスしていいんだよ?」
『……リラ…?』
「あ、ごめんごめん。 西洋からきた言葉なんだ。
僕の上司がよく西洋の言葉を知っていてね。
影響されたんだ」
苦笑を零す総司様は目を瞑った。
『……総司様は』
「あ、今総司様って言った」
『……ぁ、』
「……やっぱり慣れないよね?
なら、それでもいいよ」
笑った総司様に詫びを申し入れると「堅いよ!」と頬を抓られてしまった。
暫く下らないお話を総司様として、空が霞み始めたところで腰をあげた。
『……また、明日』
「うん、また明日」
私の言葉に驚いたように目を見開いた総司様はすぐに嬉しそうに笑った。

