『またお越し下さいませ』





「あぁ、また来るよ。




菊花。」







私の名前を、呼ばないで。






そんな自分の気持ちを胸に押し込めながら深々と頭を下げて硬く目を瞑る。








ここは吉原。







吉原でも一流のこの店は鮮やかで、



酷く私の目を壊す。





「菊花、次」





『……姐さん、畏まりました。 今すぐ』






ここは縦社会。



美しいモノなどありはしない。






美しいのは、その“商品”。





即ち、私達の カ ラ ダ 。







目を瞑るにも、腕を絡めるにも、乱れるにも、私達の動作全てに形がついてまわる。






それは本当に





“愛”





と、言えましょうか?