バレンタインには甘いチョコ。

「景ちゃん…」


気づけばぽつりと呟いていた。


狭い六畳の部屋に虚しく響く。


その時。


コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「杏ー?」


「何?」


お母さんの声だ。


お母さんは「入るわよー?」と断ってから、部屋の扉を開けて、中に入ってきた。


「あんた今日バレンタインよ?」


エプロン姿のお母さん。きっとさっきまで家事をしていたんだろう。


「…知ってるよ。」


「チョコ作んないの、あんた」


「…作んない」


私はふいっとそっぽを向いた。