家を出るとき、お母さんが「頑張ってね」って言ってくれた。


隣だから、すぐに着いた。

震える指でインターホンを押す。


かつてこんなに緊張する思いをしたことはあっただろうか。


しばらくして、ガチャッと玄関のドアが開いた。


景ちゃんだ。


景ちゃんは私と目が合うと、一瞬驚いたように目を見開いて、やがて「…何」と視線をそらした。


ー…ズキッ


胸がちくんって痛んだ。


だけど。


伝えるって決めたから。


「ごめんなさいっっ」


私はがばっと勢いよく頭を下げた。


両手を前に、ラッピングで包んだチョコを持って。