「神崎先生」




忙しない雑多な音に負けないように、顔を少し近づけて呼ぶと、先生はようやく私に気づいた。




「あぁ、如月か。」




神崎 咲夜(カンザキ サクヤ)24歳。
こちらを向いた先生の顔は、相変わらず整っている。横に流すように軽くセットされた黒髪、切れ長の目、通った鼻筋。
女子からの人気はダントツでトップだ。





まあ、マコには負けるけど…、
なんてノロケてみる。





「頼まれていた、課題のプリントです。」


プリントの束を手渡す。


「悪いな。」




「いえ。では、失礼します。」



会釈して、背を向ける私を




「如月」



先生は呼び止めた。