妖勾伝

「それで、此方らが……」



「レンと、
アヤーーー」




珀の言葉を遮って、神月が付け足す。

ニヤリと笑うその口元から、何を見知っているのか分からない不可解さが顔をみせた。


「知っているなら話が早い。
二人共、美男美女だろ……」


言葉を繋ぐ珀に向かって、神月はパックリと大きな口を開けて笑い出した。





「アハハハハハハーー

美男美女か。
それも、楽しくていいかもな。
だが……」



神月は一笑い終え、その眼に見透かした二人の関係を教えてやろうと、

珀の耳にかかった艶やかな黒髪を撫で付け、目の前に座するアヤとレンに聞こえるように耳打ちした。







「アヤは、
男だ。」





まぁ、と目をまん丸にする珀。

アヤとレンの顔を、交互に見合わせながら、「別嬪だねぇ…」と笑みをもらし付け加えた。




「何故、
アヤが男だと…」


レンが驚きを隠せないように、神月に問いかける。

アヤは傍で腰を落ち着かせたまま、そのやり取りを聞いていた。


その二人の反応を見て、更に神月はほくそ笑む。

珀の腕を絡めとり、猪口の底に残った一滴をその喉に流した。



「俺は、
女には目がないんでね……」




ニタリと笑う神月。

アヤは、静かにその笑みを受け取った。