妖勾伝

「あらぁ、

皆さん、お知り合いだったのかい?」



珀が様子を見計らって、妙な雰囲気漂う三人の間に割入ってきた。

この場を簡単に取りなすのは、珀にとっては朝飯前の事なのだろう。


男に向かってもう一口酒を勧めると、妖艶に揺らぐ朱い口唇をニンマリと動かした。



「ささ、
立っていないで寛いでおくれよ。」


レンは珀に云われるまま、仕方なしに男と向き合う膳の前に腰を下ろした。



「此方ら、
神月様。
道に迷ってしまったそうで…
さっき、夕餉の食材を取りに行った時に山の中で会ったんだよ。」


そう云う珀は、神月にやんわりと寄り添う。


たわわな胸が朱色の着物の襟刳りで柔らかな弧を描き、神月の腕に気持ちよさそうに押し付けられていった。



それを拒するでもなく、珀の豊満な胸とは不釣り合いの細い肩をグッと引き寄せると、神月は笑ってみせた。




「美人に拾われて、助かったよ。
今晩は、ゆっくり休めそうだ……」




あながち嘘ではないこの態度。


神月は女好きなのだろう、とアヤは肩を竦めた。






闇の気配が消え失せた、神月ーーー



こうして見ると、ただの女好きな色男だ。

歪な片眼。

それを除けば、かなりのいい男なのかもしれない。


珀の満更な態度を見ていても、それが伺えた。