「家路に向かう途中に、こうして脚を囚われ怪我をしてしまい、動こうにも動けなくなってしまいました。」
そう、皺の刻まれた口元から漏れる老婆の声は掠れて聞き取りづらく、注意深く二人は耳を傾けた。
足元では、紫乃と呼ばれた少女が心配そうにパックリ裂けた傷口をいたわっている。
気を利かしたアヤが、自身の荷から薬草と手拭いを取り出すと、素早くその傷を手当てしながらこう云った。
「お送りしますよ。
この山道、二人だけでは不安でしょう。」
「でも……」
手際の良いアヤを見て、老婆は少し躊躇った。
「良いのですよ。
別に先を急いでいる訳でもないので。」
微笑むアヤは、その手できっちりと傷口に手拭いを結わえ、老婆に向かって背を見せた。
「私が婆様を背負います。
連れは、先程怪我をしたもので…」
歩み寄るレンを目で制して、アヤは続けた。
「どうぞ。」
小さな躰の老婆を背負うアヤの足取りは先程とは変わらず、荒れた山道をゆっくりと進んでゆく。
アヤの荷を担いだレンも、その後を何も云わず紫乃と連れだつ。
足元に幾多も舞い散る、楡の枯れ葉を踏みながら。
辺りは闇ーーー
四人の進む林の小径は、鬱蒼と木々が重なりあい、
その闇を深めていくばかりだった。
そう、皺の刻まれた口元から漏れる老婆の声は掠れて聞き取りづらく、注意深く二人は耳を傾けた。
足元では、紫乃と呼ばれた少女が心配そうにパックリ裂けた傷口をいたわっている。
気を利かしたアヤが、自身の荷から薬草と手拭いを取り出すと、素早くその傷を手当てしながらこう云った。
「お送りしますよ。
この山道、二人だけでは不安でしょう。」
「でも……」
手際の良いアヤを見て、老婆は少し躊躇った。
「良いのですよ。
別に先を急いでいる訳でもないので。」
微笑むアヤは、その手できっちりと傷口に手拭いを結わえ、老婆に向かって背を見せた。
「私が婆様を背負います。
連れは、先程怪我をしたもので…」
歩み寄るレンを目で制して、アヤは続けた。
「どうぞ。」
小さな躰の老婆を背負うアヤの足取りは先程とは変わらず、荒れた山道をゆっくりと進んでゆく。
アヤの荷を担いだレンも、その後を何も云わず紫乃と連れだつ。
足元に幾多も舞い散る、楡の枯れ葉を踏みながら。
辺りは闇ーーー
四人の進む林の小径は、鬱蒼と木々が重なりあい、
その闇を深めていくばかりだった。



