クリクリとした、丸っこい少女の瞳。
猫に似たその瞳が、ガラス玉の様にクルリと川面に残る朱を映し、一瞬色を変えたように見えた。
上目がちにチラリと見やってくるその視線に、レンは気付かれない様に息をのむ。
何かある訳ではなかったのだが、先程抱いた少女の躰の柔らかさが仄かに残り、レンの浅い部分を擽っていたのだった。
「婆様が…
山狩りの獲物に挟まれ怪我をしてしまってーー」
安堵からか、大きな瞳にゆっくりと泪が浮かんでくる。
その泪が零れ落ちないうちに、アヤは少女の細い肩を優しく抱き云った。
「その場に、
連れて行ってもらえますか。
婆様が、手遅れにならないうちに…」
沢から差ほど離れていない場所。
林の小径。
その少し登った小径の端に、その老婆は小さくうずくまっていた。
「婆様!」
駆け寄る少女。
居ても経っても居られない様子で、その声は静かな山に木霊していく。
小さく身を捩る姿。
少女の声に気付き起こした顔には、深い皺が幾つも刻まれている。
「紫乃(シノ)……」
そう呟く老婆の横には、血がべっとりと付いた歯枷が転がっており、挟まれた足首の傷の深さが伺えた。
猫に似たその瞳が、ガラス玉の様にクルリと川面に残る朱を映し、一瞬色を変えたように見えた。
上目がちにチラリと見やってくるその視線に、レンは気付かれない様に息をのむ。
何かある訳ではなかったのだが、先程抱いた少女の躰の柔らかさが仄かに残り、レンの浅い部分を擽っていたのだった。
「婆様が…
山狩りの獲物に挟まれ怪我をしてしまってーー」
安堵からか、大きな瞳にゆっくりと泪が浮かんでくる。
その泪が零れ落ちないうちに、アヤは少女の細い肩を優しく抱き云った。
「その場に、
連れて行ってもらえますか。
婆様が、手遅れにならないうちに…」
沢から差ほど離れていない場所。
林の小径。
その少し登った小径の端に、その老婆は小さくうずくまっていた。
「婆様!」
駆け寄る少女。
居ても経っても居られない様子で、その声は静かな山に木霊していく。
小さく身を捩る姿。
少女の声に気付き起こした顔には、深い皺が幾つも刻まれている。
「紫乃(シノ)……」
そう呟く老婆の横には、血がべっとりと付いた歯枷が転がっており、挟まれた足首の傷の深さが伺えた。



