妖勾伝

「生みの親か…

確かレンは、
見せ小屋で各地を回っていた、お頭のオジキに拾われたんだよな。」

「あぁ、
人売りのな……」




見せ小屋とは名ばかりの、人売り商売をしていたオジキ。

影では、金さえ払えば人一人殺す事ぐらい軽く請け負っていた。



簡単に云えば、『何でも屋』ーーー




あの、

皆が焼き尽くされた火事が起こる六つの時まで、レンは其処で育ったのだった。


酷い生活だったが抜けるスベも分からず、母親替わりだった姐サになんとか守られ、その幼い躰で六つまで生き延びてきた。


その骨ばかりが浮き立つ幼い躰を、濡らした衣地で優しく拭きながら、姐サはレンにこう語っていたのだ。




「痣っていうのはよ、親との繋がりだ。
紡ぎ出されていくその小さな躰に、必要のないものなんて無い。
すべてに、意味があるんだ。

この痣も、離れ離れになったぬしの母親と逢うための『目印』なんだよーーー」




母親なんてものをその時の幼いレンにとっては、とうてい想像なんて出来なかった。

唯一レンの中にある母親像は、やはり姐サ一人。


十五とほんの少し歳の離れた姐サだったが、母親の替わりとなるレンの一筋の存在だった。