妖勾伝

見せ小屋で、親もなく孤独な幼少期を過ごしたレン。

血を吐く程の仕事を躰に仕込まれ、物として扱わるレンを守ってくれる大人は誰一人いなかった。




たった一人、
『姐サ』を除いてはーーー



過酷な生活の中で儚く灯るその母の様な優しさに身を委ね、その温もりに触れれる瞬間だけが幼いレンの幸せだった。

しかし、その幸せもレンが数え六つで終わってしまう。

妖艶に揺らぐ豪炎と共に、見せ小屋ごと焼き尽くされてしまった姐サ。

為す術もなく、レンはその場で燃え続ける炎を見つめる事しかできなかったのだった。



そう、

あの妖艶に燃え盛る炎ーーー


思い起こせば、あの時から始まっていたのかもしれない。

レンの身の回りで起こる奇怪な闇。

アヤと出会ったのもその後すぐ。



二人の糸を手繰り寄せるのは、陰なのか陽なのか。


ただ、今二人にとって信じれる相手は、この世に互いしかいない。

レンはアヤに誠実な忠誠心を持ち、この旅を共にしている。

心を許せる相手ーーー


この旅をしてきた二年間、アヤの凛とした優しさと強さに触れ

レンの気持ちに沸き立つ憧れが少しずつ変わってきたのは、云うまでもなかった。