妖勾伝

「あら。
美男美女だね。
こりゃぁ、目の保養だよ。
中で父ちゃんが、鼻の下のばしてた理由が分かるね。」

まくし立てるその女は、豪快に声をあげて笑う。


それを見て、やんわりと微笑むアヤ。

大輪の華が、朝露を受けて花弁をほころばす様にゆっくりと口元を上げた。


「大将にも、美味しかったとお伝えください。」


その物腰に感化されたのか、女はうっとりとアヤに見とれたまま、ぼんやりと頷いた。



ーーアヤの人受けの良さには頭が下がるね…


その様子を横で眺めていたレンは、肩を竦めた。



老若男女問わず、アヤの周りには人が集まる。

何かに引き付けられる様に。

お陰で、この旅で困った事はあまりなかった。

何かに付け、アヤの人柄で寝床にも困ることはなく、無事に旅を続ける事ができたのだ。