妖勾伝










「やっぱり、そいつの頭も見つかってないのかい?」

首を横に振る、小太りの男。

声を潜める。


軒下にぶら下げられた、茶店の暖簾が風に揺らめいて、店の中に心地良い空気を招き入れていた。



その風景とは不釣り合いな、男達の会話。

「それが…」

周りの二人が息をのむ。

「頭は付いていたんだか、前に斬られた違う男のが付いてたんだとよ。
もう、斬られた数は、十は越えるだろう。
一体、どうなってるんだろうね。」

くわばらくわばら、と掌を合わせる。



ーー本当に酷いな

耳を塞ぎたくなる様な、会話。

人の死は沢山見てきたが、この手の類の事は避けたかった。

そして、そんな場所からも早く立ち去りたい。




レンは肩を竦め、呑気に店のコネコと遊びだしたアヤを急かした。