妖勾伝





呪詛ーーー


それは、
非道な私欲の為に生命を絶たれた女が黒葛家に吐いた、
一生続く呪いの言葉。











溢れ出した闇に魅入られたのは、

一体誰なのか……










「黒葛家にとってその事は、決してあってはならない事だった。
自分の欲の為に人を殺めるなど、そんな事はもってのほかだ。
魔が差したと、簡単に済ませれる話ではない。」





尋常とは思えない、男の行動。

狂気を露わにした男の妻の、目も当てられない惨事。






薄闇に黒葛家の愚話を苦々しく語り、アヤは深く溜め息を付いた。





「そう、
それからだった…

黒葛家に不可思議な事が、相次ぐようになったのは。」








漆黒の帷が夕空に手を伸ばしていく様に、黒葛家に死者が相次いでゆく。


それは闇を納める力を持つ黒葛を抑えるかの様に、

力が受け継がれると云われている幼い男子ばかりに、死がもたらされていったのだった。




「次第にその噂は大きくなっていったよ…
あの女がかけた、黒葛への呪いだとね。


あの頃は本当に、世で蠢く闇が大きすぎた。

強い念を持ってすれば、人が闇に堕ちる事も容易かったのだろう……」





最後に、
生きたままその躰を焼かれた女。

身を燃する炎は黒々と色を変え盛り、まるで怨を込めた魔炎の様だったと云われている。





「いまだ続くその呪いから黒葛の力を絶やさない為に、
阿釈宗と相談して都から黒葛の存在を隠したのが五百年程前ーー
牛鬼を封印する、少し前だった。

荒れた都を離れる事は痛手だったが、黒葛の血筋を絶やさないためにそうするしかなかったんだ。

そして、
黒葛に生を成した男子は身を偽り、次に力を受け継ぐ時まで女の形で過ごすとーーー」